新しいハーレーの幕開けとなる新型エンジン
ハーレー・ダビッドソンが1984年より新しいエンジン方式として取り入れたのが「エボリューションエンジン」です。
エボリューションエンジン以前までに搭載されていたのが「ショベルヘッド」と言われるエンジンで、こちらはバイクが世界的急激に普及した1960年代より開発されたハーレー・ダビッドソンを代表する形式です。
しかし他のバイクメーカーがその20年の間に次々と新しい形式のエンジンを開発していったのに対し、ハーレー・ダビッドソンは運営方針として従来までのモデルを頑なに踏襲するという方向をとってしまいました。
そのため1980年代に入るまでにはハーレー・ダビッドソンは深刻な経営難に陥っており、今後企業として継続できるかどうかという瀬戸際に立たされました。
そこでハーレー復活のために大きな変化をもたらしたのが「エボリューションエンジン」となります。
そういう意味でエボリューションエンジンはショベルヘッドとはまた違った意味でハーレー・ダビッドソンの歴史に大きな意味を与える象徴的な存在となっています。
エンジン名に「エボリューション=進化」と名付けられているのもそうした流れをくんでのことで、実際にその性能面にはそれまでのハーレーのエンジンにはない特徴がいくつか組み込まれています。
デジタルとアナログの両方の性質を持つ
エボリューションが登場する前までは、ハーレーのエンジンは壊れやすいという世間的評価がありました。
そこでより基本的なエンジン性能を高めるためにアナログ時代に開発をしたOHV方式や1カム構造といった部分は残しつつ、現代的なコンピュータによる制御設計やアルミ素材の導入など最新式のエンジン潮流に合わせたしくみも取り入れました。
そのことにより、古き良きハーレーとしてのイメージを損なうことなく、それでいて当時バイク市場を圧感していた日本車に対抗できるような高性能を実現したのでした。
ただエボリューションエンジンは登場してすぐに評判を高めたというわけではなく、当初は「エボバッシング」という新しいハーレーを批判的に見る目もありました。
とはいえ以前までの「重くて壊れやすいハーレー」のイメージを大きく一新させたという歴史的価値は現在では高く評価をされており、クラシックバイク市場においても初期のエボリューションエンジンは非常に人気があります。
既にエボリューションエンジン搭載のハーレーは生産を終了していますが、1980年代に作られた代表的車種は高値で中古市場において取引をされています。
ちなみに映画「ターミネーター2」でアーノルド・シュワルツェネッガーが乗ったバイクこそ1990年型のFLSTFというエボリューション搭載モデルです。