最もハーレーらしいと言われるエンジン
ハーレー・ダビットソンのバイクの歴史において非常に大きな特徴となっているのが通称「ショベルヘッド」と呼ばれている独特のエンジンです。
ハーレーで販売されている車種に搭載されてきたエンジンには、「パンヘッド」や「ナックルヘッド」などの種類がありますが、その中において個性的な形状をしていた「ショベルヘッド」は今も熱狂的なファンを全世界的に持っています。
まず「ショベルヘッド」という名称ですが、これはエンジンのロッカーカバー部分が地面を掘る道具の「SHOVEL(ショベル)」に似ているために付けられた名称です。
日本語では地面を掘る道具は「シャベル」と言いますが、カタカナ表記にするときの違いであり示すものは同じです。
ショベルヘッドエンジンが誕生したのは1966年からのことで、当時世界的に起こっていた電気系統を搭載したエンジンを開発するために考案されました。
直流発電機であるジェネレーターを搭載しており、それまで使用されてきたパンヘッドエンジンを一部流用して作られました。
それが1970年代に入ってからはジェネレータを廃止して代わりに交流発電機であるオルタネーターを搭載するようになります。
当初のジェネレーター搭載型のショベルヘッドを「アーリーショベル」、オルタネーター搭載型のショベルヘッドを「コーンショベル」と区別して呼ぶことがあります。
いずれのショベルヘッドも生産を中止してから既に30年以上が経過しており、クラシックカーとして残されているのみとなっています。
ショベルヘッドを搭載した名車たち
ショベルヘッドがなぜハーレーの歴史の象徴的存在になっているかというと、それは搭載されるようになった1960年代後半頃にハーレーは全盛期を迎えてきたということがあります。
そもそも1960年代というのは一般向けにオートバイの需要が急激に伸びた頃であったことから、大手メーカーであるハーレーは社会的に非常に高い知名度を得ることなりました。
そんなショベルヘッドエンジンを搭載した車種として有名なのが、初代アーリーショベルを搭載した「FL」シリーズや日本でも多く販売された「FXS」などです。
ただ70年代に入ってからは日本でこそそれなりにヒットはしたものの、アメリカ本国ではクラシカルな見た目にこだわるハーレーよりもより先進的なモデルを搭載する英国車へと興味が移っていってしまうことになります。
そうした意味でハーレーにとってのショベルヘッドというのは全盛期に作られたと同時に、その直後に訪れることになる苦難の時代の境目に現れた非常に印象深いモデルということになります。
1980年代になると新しい方式となる「FXB」などのモデルが投入されますが、結果的に1984年からエボリューションエンジンに取って代わられ生産が終了となります。