1. 新エンジン「ナックルヘッド」「パンヘッド」の歴史

新エンジン「ナックルヘッド」「パンヘッド」の歴史

ハーレーダビッドソンのロゴマーク

世界恐慌の波の中で登場した「サービ・カー」

1900年代初頭に誕生したハーレー・ダビッドソン社ですが、1920年代に入る頃にはすっかりバイクメーカーとしての知名度を獲得していました。

数々のレースで優勝の実績を作るとともに、バイク性能の新記録を次々打ち立てていくことにより一般市民の生活にもバイクはなくてはならないものになりました。

そんな事業の拡大に大きく立ちはだかったのが1930年代から起こった世界恐慌です。
1900年代から不況の波はアメリカ国内に流れ初めてはいたのですが、好調に業績を伸ばすハーレー・ダビッドソン社にとっては関係ない話のようでもありました。

しかしさすがに1930年代の大恐慌に突入するといかに好調なハーレー・ダビッドソンでも無関係というわけにはいかず、それまでぐんぐん伸びてきた売上も下降傾向が見られるようになりました。

過去最悪の数字となったのが1933年で、恐慌前には年間32000台もの売上をしていた数字が6000台にまで落ち込むことになってしまいました。

それでも工場で解雇をすることなく、レース実績や広告によりなんとか最悪の時期を乗り切りつつも生産ラインに新たに「サービ・カー」と言われる45キュービックインチ(750cc)・ツインエンジン搭載の3輪車を加えるという手に出ました。

ナックルヘッドの登場と大型化路線

現在までのハーレー社の方針が決まったと言えるのが1936年です。
前年1935年には排気量の少ない25~30キュービックインチのシングルエンジンの生産を停止し、より性能の高い排気量の高いエンジンへと路線を舵切りしました。

快適さよりもパワーの大きなバイクを作るということを選んだということで、この流れの中で登場した80キュービックインチ(1300cc)サイドバルブ・ツインは「ナックルヘッド」というニックネームのついたハーレー・ダビッドソンの歴史に残る人気車種となりました。

ナックルヘッドは初期モデルより約2倍に馬力をアップさせており、このエンジンを搭載したELシリーズはフォークやホイールのグレードも高めより重厚な見た目になりました。
ナックルヘッドの製造は1947年まで続けられています。

次の大きな転機となったのが戦後1948年のことで、ナックルヘッドをさらに大幅に改良した新世代エンジン「パンヘッド」を導入します。

パンヘッドは放熱性を意識したアルミフレームを使用しているところが特長で、航空機のエンジン技術を導入することでエンジン出力を大幅に高めました。

当時はアメリカは好景気に沸き立っており、次々と新型エンジンを採用した車種を多く販売したことによりこれまでにないほど数多くのハーレー・ダビッドソン車がアメリカ内を走ることになりました。