1. ツインカム88(ファットヘッド)の歴史

ツインカム88(ファットヘッド)の歴史

エボリューションの後継機としてのフルモデルチェンジ

1984年よりそれまでのハーレーの流れを大きく変えるモデルとして登場したエボリューションエンジンでしたが、世間的にはそれほど高い評価を得ることができませんでした。

そんなエボリューションエンジンをさらに大きく性能向上させるために開発をされたのが「ツインカム88(ファットヘッド)」です。

「ツインカム88」は通称「TC88」と呼ばれることもあり、中古ハーレー市場に出回っている車種には「EVO」もしくは「TC88」といった記号がよく使われているものを見かけます。

TC88が登場することになった背景として、1990年代に入って行われたアメリカ国内での速度規制の変更があります。

それまでは55mph(約90km/h)までであった速度規制が65~75mph(100~120km/h)と大幅に緩和されることになりました。

そこで従来までのエボリューションエンジンには出せない強力な馬力を備えるモデルとして登場したのがTC88で1450ccという巨大な排気量を持つ大型エンジンです。

さらにこれはのちの2007年のツインカム96(1584cc)や2011年のツインカム103(1689cc)といったさらなる大型化へとつながっていきます。

TC88が正式にリリースされたのはクリントン政権時の1999年で、搭載車種としてツーリングファミリーやダイナファミリーといったものがあります。

TC88開発後もソフティルといったエボリューションエンジンのままのモデルも継続して製造されていますので、完全にエボリューションエンジンの後継というよりは速度規制緩和に伴って新たに加わったエンジン形式の一つと考えた方がよいでしょう。

1カムからツインカムへの変更

エボリューションエンジンでは、ショベルヘッド以前よりハーレーのエンジンに使用されていた1カム方式を踏襲しています。

それを大きく変更して「ツインカム」にしたというところこそがこのエンジン最大の特徴と言えます。

1カム形式では総排気量を高めようとするときにどうしても制限ができてしまい、エンジン本体が大型化してしまうなどの弊害が多くありました。

そこで従来までの1カムを廃止しつつも空冷45度Vツインという形状を守りつつ、コンパクト化のためにツインカムを取り入れたというのがTC88ということになります。

ツインカムではカムシャフトを前後に振り分けし、それをチェーンで駆動させるという方式にしたことによりクランクケースを小型化することができました。

なお一般的なバイク用語の「ツインカム」とこのハーレーのTC88エンジンでは構造が異なっているため、中古で購入する際は気をつけた方がよいでしょう。