米国の交通法規改正によって登場したツインカムエンジン
現在のハーレー車のニューモデルで使用されているのがツインカムエンジンです。
初代ツインカムエンジンが登場したのは1999年のことで、これは1990年代のクリントン政権によって交通法規が大幅に改訂されたことが関係しています。
それまで米国内でのバイク走行は55mph(約90km/h)と定められていたのですが、これが改正により65~75mph(約100~120km/h)と緩和されました。
すると当然従来までのオートバイよりも排気量が大きな車種が求められるようになり、その過程によってエボリューションエンジンの改良型として作られたのがツインカムエンジンです。
初代ツインカムエンジンは「ツインカム88(1450cc)」と当時よりかなり大きな排気量をしていましたが、それが後にさらに大型となる「ツインカム96(1584cc)」や「ツインカム103(1689cc)」と更に進化しています。
現在では日本国内のバイク市場のイメージとしてハーレー=超大型車という印象がありますが、これはこのツインカムエンジンの搭載と年々高まる大型化が影響したものと言えます。
なお2016年には最新式のスクリーミング・イーグル・ツインカム110(1801cc)と普通自動車以上にもなる非常に大きなタイプが採用されています。
エボリューションエンジンとツインカムエンジンの違いとは?
それまでハーレーの主流エンジンであったエボリューションエンジンと新たなツインカムエンジンの最も大きな違いとなっているのが「ツインカム」と言われるカムシャフトを1本から2本に増やした構造です。
カムシャフトとは簡単に言うとエンジン部分において燃焼室で燃料の混合気を送ることと、反対に燃焼によって発生したガスを排出する役目をする弁を動作させるためのパーツです。
エンジンではピストン運動を行うシリンダーがあるのですが、このシリンダーの真上につけられているシャフトが1つであるか2つであるかにより、エンジン性能は大きく変化します。
ちなみに「ツインカム」という呼び方はハーレー車で使用される独自の名称であり、別の日本メーカーなどでも採用されている同様のしくみのことを「DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)」といいます。
なお豆知識として付け加えておくと、車種としての名称も「ツインカム」は別名「ファットヘッド」と言われているので中古で車種を探すときには覚えておくと便利です。
ツインカムエンジンではカムシャフトが前後に振り分けられていることから、排気量とともに車体も非常に大きくなってしまいます。
その分車体の安定性は非常によく、長距離走行や大荷物を積載するツアラーバイクとしてはかなり扱いやすい車種です。